現場が自発的に動き出す『経営管理』
公開:2019/2/28
管理項目も、責任分担も明確になった。これで、『経営管理』の準備は整った。いや、まだ重要な情報が不足している。
事業関係者全員で事業遂行状況を共有し、『異常』を把握するとともに、牽制機能を働かせながら迅速な軌道修正(=改善活動)を実行させるためには、誰が見ても同じ良・否判断ができなければならない。
迅速に実績を把握・報告できたとしても、それが良いのか、悪いのか判断できなければ、報告としての意味を成さない。また、報告先に対する報告者の意思を表すという意味でも、実績の良・否を明確に表示した報告でなければならないと考える。
良・否判断に使用する基準は、いくつかある。
最もわかりやすいのは、予算値であろう。役員をはじめ、多くの事業関係者が認知している情報なので、実績の良・否を判断する基準としては最適だろう。しかし、対象範囲が主に損益項目に限られる点で、万能な基準という訳ではない。
次に、前年同期比もよく使用される基準だ。ただ、前年同期比には前年度よりも好転しなければ『否』と錯覚してしまう傾向があるので、使用する場合は注意が必要だ。
さらに、時系列推移も有効な基準と成りえる。前年同期比が1つの基準に判断を委ねるのに対して、時系列推移は過去実績の変動域を良・否の判断基準とするため、多少の悪化も『良』と判断する、許容範囲のある基準だと言える。
このように、『良・否』の判断基準にはいくつかの情報があるため、管理対象項目や管理目的を考慮し、適切な基準を選択する必要がある。
ここで、予算値を良否判断基準として使用してはならない指標があることを例示しておこう。その指標とは、棚卸資産残高である。予算よりも売上が大幅に増加している時、棚卸資産残高を予算残高以下に抑えようとすると、機会損失を生じさせる恐れがある。そのため、棚卸資産は近い将来の売上高や売上原価見込を基準とした、保有日数や資産回転率を良・否判定の基準とすることが好ましい。
課題と原因がひとめで解るような管理項目を定め、その管理項目の責任者・責任部門を明らかにし、さらに把握した実績の良・否を誰もが同じように判断できる基準に照らし合わせて事業遂行関係者全員で共有できれば、現場は必ず自らの意思で改善に向けた活動を始めるようになる。さて、あなたの会社の『経営管理』は、いかがだろうか?
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